2年ぶりの再開のFREECLASS。当初の目標として月に1回良い物を紹介しようと言ったコンセプト・・・だった筈。
仕事の関係で大分遅れてしました。というか投げ出していました、サイトを。
 これじゃいかんということで再開。
 第一回目は表紙のロゴも新たに、等身大で使えるアイテムを紹介。
その名はBASIC YK。
 宮城興業株式会社を知ったのは2001年だからもうかれこれ7、8年といったところか。
きっかけは竢o版から出されていた「エヴィスの極意」。
日本製エヴィスの革靴を生産している場所として紹介されており、それからずっと気になって
WEB上にあったサイトをずっとお気に入りしていた。
それから宮城興業がオリジナルでオーダーメイドシューズをやるようになったことで俄然気になり出した。

 その頃は空前の高級革靴ブーム。イギリやイタリアから、それこそ知る人ぞ知るといったブランドが紹介され
その流れは日本の製靴業界に向けられ、グッドイヤーウエルテッドの出来るメーカーも再評価されるようになり、
色々なブランドが現れた。
10万円を軽く超える靴がそれこそ飛ぶように売れたという。
 日本の流行。 この流れは嘗て私が体験した数々の流行と酷似している。
私が体験したのはバスケブーム、ヴィンテージブームからレプリカブーム、ハイテクスニーカーブーム、ウラハラ、
シルバーアクセサリー、機械式時計、イタリア製トップス、そして革靴と。
 どれも「コダワリ」や「希少性」など、日本人の男性が弱いところをうまく突いた戦略で、うまい具合に私ものっかってた。

だが、流行には終焉が必ずある。
終わらないと信じて疑わなかった、気に入っていた筈のそれは「新たな流行」の発生と共に終わっていく。
・・・・一部の愛好家を残して。

 革靴ブームも終焉の只中だろうか。一般的な社会人が維持できる、買い続けられる価格ではなかったというのが
本音ではないだろうか。
高い靴を買った愛好家は履かないで仕舞っておくか飾っておくかぐらいらしい。
正直話すと私もそのクチだ。十何万もした靴は下駄箱に静かに収まっている。

気づけばよく履いているのは5万円アンダーな革靴ばかり。
逆に言うと普段履きというのはそれぐらいで十分なのだ。
30代になると靴以外にも出費は増えてくる。そんな中で楽に履ける靴が欲しくなった。


話を宮城に戻す。
オーダーしたかったのだが、それよりも工場に行ってみたかったという衝動が強く、
ひょっとしたら面白いものが置いてあるかもしれないという淡い期待を胸に山形県に車を走らせた。
 7月某日、暑い日で気温は30度を超えていた。
 山形県南陽市。そこに宮城興業株式会社はある。工場というよりは工房、長屋に近い風情だ。
工場とは別にショップも構えている。工場の入り口横にあるTUFF本店だ。
ここでは主にSTリラックスを販売しており、残念ながらお買い得品の類は無かった。
ここの担当の初老の方と随分と長く話しをしたと思う。
東北の内陸特有の訛りがある彼が言うのは
「いろんなブランドのいろんな靴やってる」
と奥の工場から出てきたのは山形の田舎には似つかわしくない派手で先のとがった所謂ギャル男系靴だった。
他にもレディスをやっているそうで、グッドイヤー以外にも私の知る限りではステッチダウンもシルウエルトも出来る
勿論、セメントやボロネーゼ、マッケイも手がける器用なメーカーと言えるだろう。
だからクラッシクとは言いがたい前述のとんがりブーツやSTリラックスシリーズも出来、
OEMなんかも数多く出掛けてがけているのは納得した次第である。
「本格的なやつが欲しいのか?」
「まぁ、はい、そんなところです。」
「じゃあ、こんなのはどうかな?」
と出されたのがBASIC YKのフルブローグだった。
 正直書くとあまりにも垢抜けない、つまらないもんだと思った。まさにベーシックだったわけだ。
残念ながら私の琴線に触れるものではないと決め付けようと思ったが、
折角出されたものを試し履きしないのも無礼であるから履いてみた。

26.5と言ったのだが、出されたサイズは26。
これで大丈夫だという。・・・何故か?
それはなんとウィズがF(EEEEの次)もあるからだ。
確かに私の足は幅広・甲高で正直ダサい足だ。
いつもDウィズとかだと1〜2インチ大きいものを履いた。Fというは初体験だった。
「これなら幅が広いから大丈夫。でもFはあんまり作らないだよ。」
履くとジャストの靴特有のプシューという靴の空気が外に逃げる良い音がした。
合わない靴を履いてもこの音はしない、もっと違う音がするのだ。

試着するといつも当る場所はあたらない。不思議な感覚だ。
ただ右足の親指が少し当る感じがした。そこを指摘すると
「ちょっと待ってて。」
と工場から持ち出したのは同じサイズ・同じウィズのどうみても同じもの。
革が少し違うとのことで履いてみたら当らなくなった。
革でこうも違うのかと驚いた。
確かに同じジーンズでもサイズが同じであったとしても工員の手加減で1cmぐらいの誤差は出る。
そういったものと一緒かと思った。

数歩あるてみたが変な皺も出ず、軽い。
定番に手を出さない性分だが、これはお買い上げとなった。

では靴を実際詳しくみていこう。
 甲革は国産カーフで「誂えシリーズ」と同じ革だという。
黒のみの選択肢しかないが同クオリティを半額近くで手に入れられるのだ。

良い革の見分け方のひとつとして肌理(キメ)の細かさが挙げられる。
人間の肌もそうだが、キメの細かい方が良い革とされる。
革でみるときは少し指で押したときに細かな皺が出て、指を戻すとふっと戻るのが良い革の特徴だと言う。
勿論この革もそのような反応を示した。
(※牛革以外やガラス革、コードバンはその限りではなく、店で試すのは控えましょう。)

ブローグのパーフォレイションは均一ではないものの、価格を考えれば目をつぶれる程度。
 中敷は黄土色のレザーがあてがわれていた。”SIMPLE & NATURAL”とはこのシューズそのものずばりを語っている。
戦中より続けられる靴つくり。
 フロント中敷は自生の革。とこちらの方が革としてリアルで味が出そうな雰囲気。
 踵落としのためにヒールに釘が打たれ、そこが穴となる。海外ブランドはこの穴を嫌い、別革で隠したりするが
スコッチグレインやここも穴をそのまま出している。スコッチグレインに比べてかなり粗野に空けられており、
知らなければ不良品と思われる。
 アウトソール、スタックヒールはレザーの積層ではなくスポンジが使われている。
価格の逓減とクッション性からこちらの方が効率が良いだろう。DANNERでも採用されている仕様だ。
DANNERの場合、ステッチダウンなので中敷はあるものの、中物がない。
履き心地とクッション性をアウトソールに見出した訳だ。
 こちらはグッドイヤー製法なので中物もしっかりコルクを詰めており、更にスポンジをアウトソールに使っている。
実際足の疲れはレザーの積層のそれとかなり違ってきており、かなり軽減されている。
足を使う職業でセメント靴を履きたくないけど本格仕様がよいという方には最適だろう。
 ヒールをまで一周する360度グッドイヤーウエルテッド。オールデンやトリッカーズにもみられる仕様。
 このモデルの肝とも言うべきソール。グッドイヤーウエルトには似つかわしくないハイテクデザイン。
素材もハイテクでRBセラミックと言う。
RBセラミックとはRice Bran Ceramicsの略称で日本語では「米糠セラミック」となる。
脱脂した米糠にフェノール樹脂を混ぜて生成されたものでその硬さは焼入れ済みの鋼と同等且つ
水より少し重い程度の質量、潤滑油が無くてもよく滑る、電波を吸収するなど多機能素材である。
山形大学工学部にいた堀川助教授と同県天童市内の三和油脂が共同開発した。
硬質多孔性炭素素材で摩擦係数が高く、磨耗にも強いとのこと。
10年ほど前に作られた機能素材だが、今もその輝きは色あせていない。
勿論リソールは可能だ。

 ハイテクと伝統をバランスよく取り入れた意欲作であるが、前述の通り「艶」や「所有する満足感」といった類の感情は
生まれない。あるのは「実用」の一点主義。
OEMや誂え系はそれを備えていると思えるのだが如何せんそういったところが垢抜けないというか不器用というか
そこを改善すればすばらしいものに変わるに違いない。
まずは名称から変えてみてはどうだろうか?
宮城興業株式会社 SITE: http://www.miyagikogyo.co.jp/
タフ サポート     SITE: http://www3.omn.ne.jp/~tuffsp00/
<< >>
2008 FREECLASS製作委員会